AIによって、「学ぶ」ということの内容や方法を見直す必要が生まれています。しかし、何を学ぶかを決めるのは、これからも学校や大学だけなのでしょうか。学習者自身が興味や関心に応じて学びを組み立て、必要に応じて変えていくこともできるはずです。今回は、AI時代に求められる「学びを設計する力」について考えます。
目次
- 「あなたが主人公」と言いながら、道順は決められている
- AIは「自動運転」ではなく、可能性を広げるナビにする
- 学ぶ「場所」まで一つではなくなる
「あなたが主人公」と言いながら、道順は決められている
これまで、「学びのオーナーシップ」ということを繰り返し考えてきました。学ぶ本人が、自分の学びを自分のものとして引き受ける。それはとても重要です。しかし、学校という仕組みを考えると、少し矛盾したところがあります。
以前、学校のカリキュラムを「ツアー」にたとえました。数学を学ぶ。国語を学ぶ。英語を学ぶ。高校へ行けばこの科目、大学へ行けばこの必修科目。行き先も順序も、かなりの部分が最初から決められています。
そういう既成のツアーに参加している学生に、「あなたが学びのオーナーですよ」と言っても、「でも、このツアーを作ったのはそちらですよね」という話になる。
だから、これから重要になるのは、オーナーシップを持つことだけでなく、自分の学びを設計する力だと思っています。
もちろん、何も知らない人が、最初から自分に必要な学びをすべて見通せるわけではありません。だからこそ、学校でさまざまな基礎を学び、自分の知らなかった世界に触れることにも意味があります。
少し学んでみると、何かを面白いと思う。そこからもう少し調べると、別の疑問や関心が生まれてくる。そうした経験を重ねながら、学びの方向を自分で考え、必要に応じて設計図を書き換えていく。
最初に決めた目標や計画に、ずっと従う必要はありません。学ぶことで興味そのものが変わっていくこともある。それに合わせて学び方を変えられることが、自分で学びを設計する醍醐味なのだと思います。

AIは「自動運転装置」ではなく、可能性を広げるナビ
ここでAIは、非常に面白い役割を果たせます。たとえば、学習者が関心を持っているテーマについて、「こういう方向からも考えられます」「こんなことにも興味があるのではありませんか」「こちらの本を読んでみてもいいかもしれません」と提案してくれる。
ただし、私はAIを自動運転装置にしてはいけないと思っています。「このレポートを書いて」とAIに頼み、完成品だけ受け取る。それでは自分は何も運転していません。
そうではなく、AIをナビゲーターとして活用すればいい。しかも、目的地までの最短ルートを教えるだけのナビではありません。別の行き方や、思いもよらなかった目的地まで提案してくれるナビです。
もちろん、AIの提案をすべて受け入れる必要はありません。どの方向へ進むのかを決めるのは、学習者自身です。
学んでいる途中で、「今度はこっちへ行ってみたい」と思ったら、その先をAIと一緒に探してみる。答えを出してもらうためだけでなく、自分では思いつかなかった問いや関心を見つけるためにAIを使う。
そうすれば、AIは学びを代行するものではなく、学びの可能性を広げる存在になります。新しい発見を重ねながら、学ぶワクワク感を持続させることにもつながると思います。

学ぶ「場所」まで一つではなくなる
学びを自分で設計するようになると、何を使い、どこで学ぶのかについての考え方も変わってきます。